家のつくり様は、夏を旨とすべし

「家のつくり様は、夏を旨とすべし」。とは、徒然草で有名な吉田兼好の言葉です。

家づくりは、「夏の暑さを凌げる様に設計すべき」、「冬の寒さは何とかなるよ」、ということでしょうね。

私がこの仕事を始めた40年前は、まだ「床づくり」という工法がありました。

「床づくり」は、外周部の基礎立上りは無く、床下を外気がよく通るようになるべく高くしてあります。

床下から建物の間仕切り壁の間を通って天井裏に風が通るように作ります。

風通しが良く、涼しい。

建物も通気の良さのおかげで適度に乾燥して長持ちする、という工法です。

「床づくり」は正に「家のつくり様は夏を旨とすべし」だったのです。

ちなみに、私の実家は「床づくり」の建物です。

冬の寒い時に実家に泊ると、寒いですよー。底冷えがします。断熱性能ゼロですから。

 

その後、昭和53年に発生した宮城県沖地震を契機に耐震性能などが大幅に見直されました。

昭和56年6月1日建築基準法が改正されて、現在の様な工法に変わっていきました。

 

その後、住宅に「省エネ基準」等が改正・制度化され現在の様な高気密・高断熱の住宅が造られる様になってきました。

 

断熱性能も格段に上がってきました。

ただ一方で、高気密・高断熱を追求していくと、建物の躯体の為の通気性は悪くなります。

通気性が悪いと、建物は結露しやすくなります。結露が起こると建物は劣化します。

 

40年前の住宅は、屋根は平木の野地板で、完全な防水性能は無く大雨の時は雨漏りしていました。濡れた野地板は暫く時間が経つと、通気性の良さで乾く、ということを繰り返していました。

耐震や断熱性能には多々問題がありましたが、結露が生じる可能性は低く、適切にメンテナンスしていれば長く持たせることができました。昔は築年数が100年以上の民家は、多く存在していました。

 

昔の家の性能に戻すわけにはいきません。現代の建物には高度な技術レベルが求められます。設計者、施工者、職人達も大いに勉強しなくてはなりません。

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